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Beautiful young woman in Paris, reading

 Seminar             

ドイツ語・フランス語 × 総合政策
2年間ドイツ語・フランス語を学び、海外研修に参加したあとは?

総合政策学部では、3年次(一部は2年次)からゼミ教育がはじまります。政治・法・経済・経営・環境・国際協力・文学・芸術・思想・宗教・歴史・ジェンダー・スポーツなど、幅広い専門分野を少人数で学べるのが総合政策学部のゼミ教育の特色です。

ゼミでは自分で研究テーマを決めて、リサーチとプレゼンテーションを繰り返しながら卒業論文の執筆を目指します。ドイツ語・フランス語を学ぶことで、みなさんの研究テーマも広がってきます。ドイツ・フランスとの関連から、研究テーマについて考えてみましょう。(研究テーマは必ずゼミの担当教員と相談のうえ決めて下さい。)

法・政治・経済
​EUという壮大な実験

国家を超えた統治体としてのEU(欧州連合)の中心を担っているのはドイツとフランスです。近年ではイギリスの離脱(ブレジット)や反EUポピュリズムの波もありますが、それでもEUは5億人の人口をかかえ、国境の開放と単一通貨ユーロによって統合された巨大経済圏で、その規模はアメリカに匹敵します。さらに、EUは国家を超えた欧州議会とEU司法裁判所を有した統治体であり、とりわけ環境と人権を強く志向した民主主義社会でもあります。気候危機と人権弾圧が世界中で問題となっている昨今、同じ民主主義社会に生きる私たちにとっても、EUという壮大な実験からはまだまだ目が離せません。

ゼミ紹介(EU研究)

ゼミのテーマは、ヨーロッパ統合を進めるEUの法と政策について研究し、アジア太平洋への応用可能性を探りながら、その意義と限界を考えることです。

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学生のみなさんへ

これまでに執筆・翻訳した本を教材に研究のノウハウを伝授します。

庄司克宏(教授)

​中央集権か地方分権か

ドイツとフランスの国内政治に目を向けると、同じ民主主義国家でもドイツとフランスではだいぶシステムが異なります。ドイツが16の州と3の特別都市からなる地方分権型の連邦国家であるのに対して、フランスの地方組織は18の地域圏と101の県から成り立ちますが、伝統的に強い中央集権を志向しています。

既成政党への不信の時代?

また、ドイツが日本と同じ議院内閣制であるのに対して、フランスでは議員内閣制と大統領制が並立するかたちをとっています。またドイツ・フランスともに長らく保守と革新の二大政党(ドイツはCDUとSPD、フランスはUMP/LRとPS)が交代で政権を担ってきましたが、最近では人気の凋落が著しく、ドイツではメルケル首相のもと保守と革新の連立政権が続いています。フランスではマクロン大統領が新たな保守政党(アン・マルシェ)を創設しました。そしてどちらの国でも、反移民・反EUを掲げる右派ポピュリズム政党(ドイツのAdFやフランスのRN)の躍進が問題となっています。日本でも「政治の停滞」や「既成政党への不信」などが問題となっていますが、同じ民主主義国家のドイツやフランスと比較して考えるのも、ゼミの研究テーマとして面白いかもしれません。

労働・教育・福祉

​ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活のバランス)

ドイツは中国・アメリカ・日本に次いで国内総生産(GDP)が世界第4位、フランスは世界7位の経済大国です。しかし日本の法定労働時間が週40時間制(+残業もしばしば)であるのに対して、たとえばフランスの場合、週35時間制で、さらに有給休暇が年に約1ヶ月も。日本と違い、病欠で有休消化という慣習もありません。日本人にはうらやましいかぎりです。たしかに国内総生産では、日本は世界第3位ですが、ドイツ・フランスの人口は日本の半分程度ですので、一人一時間あたりの労働生産性ではドイツ・フランスの方が順位が上となります。

​社会保障を重視する民主主義社会

人口に関して言えば、ドイツ・フランスでは移民の受け入れや社会保障の充実によって、少子化に歯止めをかけようとしています。さらにフランスでは「結婚」未満「同棲」以上のパートナー制度「パックス(PACS)」のおかげもあって、十数年まえには出生率が2.00人を超えたこともありました。現在はフランスが1.88人とEU最高、ドイツは1.57人、日本は1.42人です。生まれた子どもを育てるうえで気になるのは教育費ですが、ドイツ・フランスとも小学校から大学まで学費はほぼ無料です。これも日本人にはうらやましいものです。また、日本と同様、国民全員が健康保険と年金に加入する皆保険制度です。「欧米」といっても、皆保険制度がないアメリカとは大きく異なります。また健康保険も年金もトータルで見ると日本より充実していますが、日本と同様、制度は行き詰まりつつあります。手厚い社会保障の維持を目指すドイツやフランスの取り組みと比較しながら、新たな社会保障政策を構想するというのもゼミの研究テーマとして有意義かもしれません。

student working in modern public library
歴史

人類の遺産と教訓としてのヨーロッパ近現代史

ドイツとフランスの近現代史は、民主主義のマイルストーンの連続です。フランス革命とナポレオン、植民地帝国主義と第一次世界大戦、ワイマール共和国とナチスの台頭、そして再びの世界大戦とユダヤ人大虐殺。これらの出来事は民主主義の栄光と影、そして没落として人類の教訓となる歴史でしょう。

学生の研究紹介(2019リサーチフェスタ最優秀賞)
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伊藤沙南 

ドイツの想起の文化に見る歴史継承のかたち

ー記念の地の実態調査を通してー

「ドイツのナチ時代に対する取り組みについては数多くの研究がありますが、個別の展示施設の展示内容や関係者の生の声をまとめたものはあまり多くありませんでした。歴史継承の現場で何が行われているのかを自分の目で確かめようと、フィールドワークを行いました。」

(2021年 Guide Book Faculty of Policy Studiesより転載)

東西冷戦、植民地戦争、学生運動

戦後ドイツは東西に分断され米ソ冷戦の最前線となりました。フランスはインドシナ戦争・アルジェリア戦争などを通じて、ほとんどの海外植民地を喪失しました。そうした社会変化と矛盾のなかで、1968年、西ドイツとフランスでは若者たちによる学生運動が起こり、社会に大きな影響を与えました。そしてそれは女性解放運動や環境保護運動にもつながっていきました。日本でも1968年といえば、東大紛争など学生運動が盛んな時期でしたが、その後どうなったのでしょうか。ドイツ・フランスと日本の学生運動の「その後」を調べてみるのも、ゼミのテーマとして面白いかもしれません。

移民国家

戦後の西ドイツとフランスは高度経済成長にも成功しますが、それを支えたのはスペイン・ポルトガル・イタリアからの移民、さらにトルコ(西ドイツ)やアルジェリア(フランス)からのイスラム移民たちでした。その結果、いまではドイツは世界第2位、フランスは第7位の移民人口をかかえる移民大国です。みなさんもドイツ・フランスに旅すれば、じつにさまざまな肌や髪の色のドイツ人・フランス人に出会うことでしょう。1989年、ドイツでは東西が統一され冷戦が終結しましたが、長引く不況や東西格差への不満のはけ口を移民に向ける、ネオナチの出現など移民排斥運動が問題となりました。移民に対する排斥運動はフランスでもありましたが、そうした問題を乗り越えながら、ドイツとフランスは2008年のEU成立を支えました。

ゼミ紹介(ドイツの歴史と社会)
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ヤンボール アダム(特任助教)

ドイツ語圏(ドイツ・オーストリア・スイス)の現代史と社会について学びながら、現代のドイツ社会がかかえるさまざまな問題について考察します。また、ケーススタディを通して、ドイツ地域研究・日独比較研究を行います。

ゼミ紹介(フランスとアフリカの交流史)

中尾沙季子(助教)

(準備中)

学生のみなさんへ

(準備中)

女性・ジェンダー/セクシャリティ

女性解放運動の展開

1968年に象徴される若者たちの学生運動から、ドイツ・フランスでは女性の権利と地位の向上、社会・文化の意識改革を求める女性解放運動が展開されました。そのなかで、たとえば「男は仕事」「女は家事育児」といった性別役割が否定されたり、人工妊娠中絶が合法化されたりしました。興味深いのは、日本で中絶が合法化された背景にあったのは、障がい児を産ませないという差別意識(優生思想)だったのに対して、ドイツ・フランスでは「女性の権利」として中絶が合法化されたことです。また女性解放運動のなかで、セクシャリティをパートナー同士が対等に楽しむコミュニケーションとして、オープンに語る文化も生まれました。この点も、男女のセックスレスが社会問題となる日本とはだいぶ違いますね。

男女のさらなる平等と同性婚の合法化

もちろんドイツ・フランスにも依然として男女差別や格差は残っていますが、たとえばドイツの場合、2015年に制定された「女性クオータ法」によって、大企業の監査役員の女性の割合が30%まで上昇、2021年はジェンダー・ギャップ指数(GGI)も世界11位でした。ちなみにフランスは16位、日本は「先進国」最低の121位でした。また同性婚もフランスで2013年、ドイツで2017年に合法化されています。

ジェンダーと政治

政治の世界でも、2000年代に入ると、当時の保守連立政権で副首相兼外相をつとめたヴェスターヴェレや、人気のあったベルリン市長ヴォーヴェライトが同性愛をカミングアウト、フランスでも同性愛者をカミングアウトしたはじめての国会議員ドゥラノエがパリ市長に就任、市長としてパリのゲイパレードの先頭を歩いたことを話題を呼びました。さらにドイツで長期政権を敷いたメルケル前首相やEU欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエンら、女性政治家の活躍もめざましく、政治世界の風景はジェンダーフリーとなりつつあります。

EU flag in female hands. Woman holding w
スポーツ

ワールドカップと移民

移民問題とリンクしているのが、ドイツとフランスの国民的スポーツ、サッカーです。ドイツもフランスもワールドカップ優勝の経験があるサッカー王国ですが、代表に名を連ねる(連ねた)メンバーは、アフリカ系、中東系、トルコ系、東ヨーロッパ系、北欧系など多種多様です。代表チームの活躍は移民国家としてのドイツ・フランスの国民「統合」の象徴として賞賛されますが、敗れると移民系の選手に怒りの矛先が向けられるという矛盾もあります。記憶に新しいところでは、ドイツが惨敗に終わったロシア大会後、トルコ系の代表選手エジルが「勝てばドイツ人で、負ければ移民だ」と言って代表を引退しました。

Football fans with German flag jumping a
サッカーとコミュニティ(地域社会)

ところでドイツ国内リーグ(ブンデスリーグ)では、香川真司をはじめ多くの日本人選手が成功を収めてきました。こうしたドイツ・サッカーを支えるのは、地域のスポーツクラブです。選手の育成も学校ではなく、地域クラブが主体となっています。日本の野球文化とは、かなり違いますね。

 

ドイツ・サッカーと民族(エスニシティ)や地域(コミュニティ)との関係をゼミの研究テーマとして調べてみるのも面白そうです。

宗教

イスラム教

スポーツとともに移民問題と密接に連関しているのが宗教です。移民の増大とともにドイツ・フランスには約1000万人近いイスラム教徒の人々が暮らしています。イスラムといってもそのスタンスは人それぞれ、多くのひとは社会でふつうに生活しています。よく問題となるのは、イスラム教徒の女性のスカーフ着用の是非です。ドイツでは信仰の自由を理由に、イスラム教徒の生徒が学校でスカーフを着用することが許されています。しかしフランスでは、政教分離(ライシテ)を理由に禁止されています。もっともフランスの場合、イスラム教のスカーフだけでなく、キリスト教の十字架のネックレスやイヤリングも禁止です。信仰の自由も政教分離も民主主義社会に欠かせない原則ですが、どちらを優先させるかで、対応がまったく異なるのは興味深いことです。

難民とシャルリエブド襲撃事件

シリア内戦以降、大量の難民がヨーロッパに押し寄せるなかで、残念ながらイスラム教徒に対するヘイト(嫌がらせ)も増えてしまいました。2015年には、イスラム教を繰り返し風刺したフランスの雑誌『シャルリー・エブド』の編集部がイスラム過激派に襲撃され、多数の関係者が殺害されるテロもありました。ときに人を不快にさせる風刺という表現も問題かもしれませんが、しかし表現の自由に対するテロリズムは世界中で大きな問題となりました。

Happy beautiful young Muslim woman sight
寛容について考える

しかしもっと考えなければならないのは、自分とは「異なる者」への寛容でしょう。けれども寛容とは何でしょうか。多数派が少数派にお慈悲を与えるという意味での「寛容」は世界中でよく見られますが、これで良いのでしょうか。ヨーロッパには、お互いがお互いを尊重し対等と見なしたうえでの「寛容」という思想の伝統があります。フランスのヴォルテール(1694-1778)の『寛容論』やドイツのレッシング(1729-1781)の『賢者ナータン』は、今日でも寛容について考えるための優れた古典でしょう。

キリスト教の伝統

フランスは伝統的にカトリック教徒が多い国ですが、フランス革命以後、政教分離(ライシテ)という別の伝統もあります。そのため、学校をはじめ公共空間に宗教を持ち込むことが厳しく規制されています。ドイツの場合には、キリスト教が国家の理念の一部であることを認め、政権与党の名前も「キリスト教民主同盟(CDU)」です。(もちろん個人には信仰の自由があります。)そのキリスト教も、ドイツでは北がプロテスタント、南がカトリックと勢力が分かれています。カトリックの中心地ケルンのカーニバルは世界的に有名ですが、同じドイツでもプロテスタント地域にはカーニバル自体が存在しません。もっとも現在では、フランスでもドイツでも、無宗教かそれに近い立場の人々が多いのも事実です。

ゼミ紹介(ヨーロッパ思想)
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横山陸(准教授)

ドイツの「哲学的人間学」の伝統から、生命倫理、動物倫理、環境倫理の統合や、社会と感情の関係について研究しています。今年度のゼミでは、ドイツのユダヤ系の哲学者ハンナ・アーレントの著作を読みながら、政治哲学の視点から難民問題について考えます。

学生のみなさんへ

よく寛容が大切、多様性が大切と言われますが、では「寛容とは何か?」「多様性とは何か?」と改めて問うと、分かるようで分からない言葉です。社会の理念や規範になっている概念について、一緒に改めて考えてみましょう。

環境保護

持続可能な社会(サステナビリティ)へ向けて

ドイツと言えば、環境保護です。2017年のOECD調査では、ドイツのリサイクル率は67%(日本は20%)。さらにビン・ペットボトルのリユース(再利用)や、商品の簡易包装、マイバック使用などのリデュース(削減)も徹底しています。

再生可能エネルギー政策と地域コミュニティ

また火力・原子力から、太陽光・風力による再生可能エネルギーへの転換も進んでおり、2019年には太陽光・風力による発電量が火力発電を上回りました。さらに2022年までに、ドイツ国内すべての原発が廃止される予定です。こうしたドイツのエネルギー政策を支えているのも、スポーツと同様に地域コミュニティです。1970年代から地域の原発建設への反対運動が繰り返されるなかで、脱原発と再生可能エネルギーへの転換という政策意識がドイツ全土で形成されました。そして2000年代には、環境政党である緑の党が連邦政府の連立与党として政権にも参加しました。ドイツに行くと、あちらこちらで白い風車の形の風力発電機を目にすることでしょう。火力や原子力と違って、風力発電には巨大な施設が必要なく、風車が数本あれば小さな地域コミュニティでも自前で電気がまかなえるのです。

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学生の研究紹介(2017年プロジェクト奨学金 学部長賞)
Screenshot_2021-04-15 総合政策学部 3年 山田麻莉奈さんの

山田麻莉奈

今後の日本の再生エネルギー政策に必要なものとは?

ードイツ・リヒテナウ市の事例から考えるー

リヒテナウ市にて再生エネルギーに関する取材調査を行い、その様子がWestfalenblatt(22万人以上の読者を持つドイツ地方新聞)に掲載されました。

詳しくは総合政策学部ホームページを参照してください。

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